オペ見学こぼれ話vol.11~麻酔科教授はスゴ腕~
オペ見学中のエピソード第11弾です。(3回連続の麻酔科エピソードでしたが、いよいよ今回でラスト)
前回記事はこちらです↓
当然のことながら、麻酔科の先生方はあらゆる外科系のオペに参加します。
何でも、うちの大学の麻酔科教授は、教授の身でありながら手技の巧みさが群を抜いていることで有名なのだとか。そのためか、教授自らがオペに入られることもしばしばです。
(※一般的に、教授が実際のオペに入って手を動かすことはあまりないため、手技については中堅どころの先生方が勝ることが多いのだとか……。うちの大学が特殊例なのかもしれません)
さて、ある日のこと。教授が麻酔科医として参加なさる、心臓外科のオペを見学する機会に恵まれました。
心臓のオペの際には、患者の状態をモニタリングするため「スワンガンツカテーテル」を予め心臓に(正確には肺動脈に)挿入しておく必要があります。(ドラマ「チーム・バチスタの栄光」で、城田優さん演じる麻酔科医が殺人に使っていたアレです)
教授の処置の間ずっとレントゲンの透視映像を見ていたのですが、教授がスワンガンツカテーテルを手に取るやいなや、まるで生き物のようにスルスルと心臓の中へ入っていくのです。
あまりの早さに、たいへん衝撃を受けました。
処置を終えた教授が近づいてきて、
「何か質問ある?」
とおっしゃったので思わず
「先生……スワンガンツ、すごかったです!」
と申し上げたところ、ニッと笑って親指を立てて去って行かれました。先生、お茶目です。
(去り際の教授。か、かっこいい……!)
*トリおんな*
生命を預かる仕事の理想と現実
自分の気持ちの整理のために、少しばかり重たい話を書きます。
実習中、さまざまな患者さんと出会いますが、大半の患者さんは学生実習にとても協力的です。上半身の服を脱いで聴診に協力してくださったり、拙い問診にも丁寧に答えてくださったり……。私から見るとちょうど祖父母と同世代の患者さんが多いので、孫と話すような気持ちで接してくださっている部分も少なからずあるのではと思います。
そうやって患者さんと仲良くなると、ご病気が早く治るよう祈る気持ちが強くなります。しかし、何と言っても大学病院なので、かなり厳しい病状の患者さんもいらっしゃるのが現実です。なかには、まだ告知はされていないものの「おそらく余命半年もないだろう」という診立ての方も。
余命などについて、学生から患者さんに情報を漏らすのはもちろんタブーです。しかし、実習でお世話になった患者さんの病状が悪いと、学生として何もして差し上げられないことに、どうしてもやるせない気持ちが湧いてしまいます。
なかには今でも病室に通うようにしている長期入院の患者さんもいるのですが(下記↓)、
学生とはいえそれなりに忙しいため、現実問題として、患者さん全員にそれができるわけではありません。
医師として働き始めれば今とは比較にならないほど大勢の患者さんを受け持つことになります。そのようなとき、いわば「患者さんに情が移る」のを、どこまで許容するのか……。
生命を預かる仕事ゆえに、100%ビジネスライクに割り切ることもできず、自分の中での線引きが非常に難しいなと最近つらつら考えているところです。
*トリおんな*
男性陣の早着替え術
以前こちら↓に書いたように、実習期間中でもできるだけおしゃれをしたいという、私なりのこだわりがあります。
実習中はケーシーに黒ズボンというシンプルなスタイルですが、そのぶん私服はワンピースやスカートが定番。そうするとなぜかテンションが上がるんです。(ちなみに、聴診器の色も大好きなピンクを選びました。笑)
さて、そんなマイルール故に、着替えには結構時間がかかるのが悩みの種。
一方で、男子の多くはTシャツ一枚で学校にやって来て上からケーシーを羽織るだけ。
着替えにかかる時間、実に10秒。タカラヅカもかくやというほどの早着替えです。(もはや男子更衣室なんて要らないんじゃないかと…笑)
おしゃれやメイクを楽しめるのは女子の特権だと思っていますが、時折男性陣のシンプルな生き方が羨ましくなるのもまた事実です。
*トリおんな*
「お困りのことは?」
どの診療科をローテーションしていても、たいてい担当患者さんを1人(科によっては2人)割り振られます。その科の実習期間中は、ほぼ毎日担当患者さんの病室を訪ねては、問診や身体診察をさせていただきます。
さて、知人('医')が担当患者さんの60代女性('患')を訪ねて問診をしようとした際のこと。
医「何かお困りのことはありませんか?(お腹が痛いとか、食欲がないとか、何か異常はないかなぁ)」
患「うーん、そうねえ……。私には息子が二人いるんだけどね」
医「……?」
患「これが二人とも、なかなか結婚しないのよ」
医「……?はい」
患「親としては心配で心配で。もう、困っちゃうわぁ」
医「あ……あぁ、それはご心配ですよね。早く結婚なさると良いですね」
この知人、授業で教わった「傾聴」「共感」の態度を思い出しながら、しっかりお話を伺ったとのことでした。
患者さんの体調が良かったからこそ、「お困りのこと」が息子さん達の話題になったのでしょう。
何だかちょっとほのぼのとした気持ちになりました。
*トリおんな*
開けてびっくりCTの中身
医療関係者でなくても、誰もが(TVなども含めると)一度は目にしているであろうCT室。ドーナツ状の巨大な機械がデンと鎮座しています。
このドーナツの中身がどうなっているか、ご存知でしょうか?
↓
↓
↓
これ。(画像は2枚ともこちら↓からお借りしました)
ここまで凄いって知ってた?「CTスキャン」のカバーを取った姿に驚きの声:らばQ
なんとまあ。トランスフォーマーもかくや、という感じの鉄骨隆々な勇ましい風貌です。
ちなみに実習中に教わったところによると、この中身は
「0.27sec/rotation」
で回転しているのだとか。
1秒あたり3.7回転。
これって結構早くないですか?
CTさん、澄ました顔してる貴方だけど、見えないところでビュンビュン回って頑張っていたのね。すごい。
余談ですが、EMI社による世界最初のCTは、The Beatlesの「アビーロード」の売り上げを開発資金としていたのだそうです。こちらもビックリな豆知識でした。
*トリおんな*
外科医のプライベートは苦労人?!
「外科医の夫をもつと'母子家庭'のような状況になる」
と聞いたことがあります。
なぜかというと、外科医は多忙でなかなか家に帰れないから。(夫婦ともに外科医のさーたり先生はすごい!※下記参照)
とある外科の先生がこんなことを仰っていました。
「いやぁ、妻には怒られてばっかりだよ。一回家から締め出されたことがあったしねえ」
「えっ、そうなんですか?」
「うん、帰りが深夜になるからもう家族は寝ているんだけどね、ある日帰ると鍵だけじゃなくてチェーンまで掛かっていたんだ」
「えー!それで、どうなさったんですか?」
「仕方ないから車中泊だったよ。ちょうど大雨の日で、車の中に雨音が響いてねぇ」
「……。(哀愁漂いすぎです、先生)」
「朝になって妻は『ごめん、忘れてた』と言っていたけれど……。本当に忘れていただけだったのかなぁ」
数多くのオペをこなす外科の先生は確かにかっこいいですが、そのプライベートは色々と大変なようです。
*トリおんな*
オペ見学こぼれ話vol.10~麻酔科医のイメージ~
前回に引き続き、麻酔科実習中の話です。
「麻酔科って、世間での認知度かなり低めだよね~。実際、ひと昔前までは麻酔科医じゃなくて外科医が麻酔をかけていたわけだし」
とは麻酔科の先生談。
「医療職以外の人に、『麻酔科医です』と言うと
『あっ、人を見ただけで身長と体重を言い当てられる人ですよね!』(それは医龍の荒瀬だろ)
『あの、殺人犯の先生ですね!』(それはチームバチスタの栄光だよ)
『ちょっとボーっとした先生でしょう』(それは麻酔科医ハナ)
って会話になっちゃうんだよな」
と冗談混じりにおっしゃっていました(笑)
麻酔科医ハナ、面白いと聞くし、一度読んでみようかな。