教授の弱点
大学病院の回診では、教授を先頭にした白衣集団がぞろぞろと歩いていきます。(そして私たち学生はこの集団に置いて行かれないよう、頑張ってトコトコ付いていくわけです)
この回診中には、初期研修医をはじめとする若手の先生方が、受け持ち患者さんの状態を教授にプレゼンする場合が多いです。
さて、とある診療科の回診中のことでした。
初期研修医の先生が、教授(この科の教授は教育熱心でいらっしゃることで有名でした)から質問責めに。
教授「それで、この患者さんの検査結果は、〇〇だったの?」
研修医「はい、一応〇〇でした(ちょっと自信なさげ)」
教授「『いちおう』ねぇ。最近の若い子たちは皆『いちおう』とか『〇〇みたいな』と言うんだけどね、それは止めた方が良いな」
研修医「すみません……」
教授「いちおうプロフェッショナルなんだから」
そこに他のベテラン先生から遠慮ないツッコミが。
「へえ、『'いちおう'プロフェッショナル』だって~。教授だって『いちおう』って言ってるじゃないの、ねぇ(笑)」
教授、一瞬沈黙。一同、爆笑。(教授も苦笑なさっていました)
これは 面白いものを見せていただきました。
*トリおんな*
オペ室こぼれ話vol.13~そっくりさん注意報~
これは先生方もまた然り。
そのため、オペ室では「そっくりさん」が大量発生してしまいます。目元だけならいくらでも似せられる……ざ○ちんさんと同じですね。
(あっ、前に回った科でお世話になった〇〇先生かな)
と思って会釈したら別人で、怪訝な顔をされるというような経験もしばしば。
そんなとき、意外にも良い目印になるのが「眼鏡」です。
赤だったり白だったり、あるいはフレームなしの眼鏡だったり……。眼鏡にこだわっていらっしゃる先生はオペ室でも気づきやすいので、ご挨拶しやすくて助かっています。
ただ、先生が眼鏡を買い換えられたときには困りそうです(笑)
*トリおんな*
オペ見学こぼれ話vol.12~心臓外科はストイック~
オペ見学中のエピソード、第12弾。
最近、一口に「外科系」と言っても、専門分野によって雰囲気にかなり差があるということが分かってきました。
例えば整形外科は
「学生さん、働き始めたらなかなか休みが取れないから、今のうちにたくさん遊んどくのがいいよ。あはははは」
と、かなり開けっぴろげな雰囲気(笑)
電鋸を使うようなダイナミックなオペ(誤解を恐れず言えば、まるで大工仕事!)が多いからでしょうか。ざっくばらんな先生が多い気がしました。
しかし対照的に、最近ローテしていた心臓外科は、とにかく真面目な雰囲気。他の外科ではオペの最中も雑談が聞こえていましたが、心臓外科のオペではなんと、雑談ほぼゼロ!
心臓は他の臓器と異なり、もしオペ後に異常が見つかれば、一刻を争って治療しなければ患者さんの生命が危うくなります。(他の臓器では一分一秒という単位では生命に関わらないことも多いです)
そのぶん、心臓外科の先生方はこれ以上ないほど慎重に患者さんを診ていらっしゃるのだと思います。
「臓器ネットワークからいつ『移植の心臓が手に入りました』と連絡があっても良いよう、常に緊急オペに備えてスタンバイをしている(キリッ)」
という話を伺ったときには、さすが外科の花形だなぁと頭が下がりました。
*トリおんな*
余談ですが、心臓外科のことを「心外(しんげ)」と略しますよね。
しかしこれ、パッと見「しんがい」だなぁということに気づいて、元々この記事に書いていた「心外」を全部「心臓外科」に書き直しました。どなたかお優しい方、この涙ぐましい努力の跡に気づいてくださいませ(笑)
心電図のキ○マーク?!
少し前のことですが、循環器内科のローテート中に、心電図の実習を経験しました。
「12誘導心電図」と言って、写真↓のような電極を胸部にくっつけます。
(画像はワイヤレス12誘導心電図伝送|富士の国よりお借りしました)
この電極は吸盤タイプになっているものが多いので、手軽に付けられる反面、外した後に赤く丸い跡がくっきり残ってしまうのが難点といえます」。
私が他の学生(男子)の(文字通り「胸を借りて」)心電図をとっていた際、横から先生が
「キミ、トリおんなさんに吸われた跡がいっぱい残るね~。よかったね~」
とセクハラすれすれの発言をなさったのにはほとほと困りました。(面白かったですけど)
確かに、吸盤の跡がキ〇マークに見えないこともない……かも、しれませんね(汗)
*トリおんな*
日焼け対策スゴい私
いきなりですが私、十年後二十年後の美しい白肌(笑)のため、日焼け対策にはかなり気を遣っています。
10月の今でも、日傘は手放せません。
さてさて。
先日、日傘・マスク・アームカバーで完全武装して家の近所を歩いていると(大学ではさすがにもう少しマイルドな格好です)、同年代のヤンチャそうな男性に声をかけられました。
「ねーねー、お姉さん。ちょっとお話ししませんか?」
もう一度言います。日傘・マスク・アームカバーで完全防御した格好です。
もはや、目しか出ていませんから。
……ちょと待てちょと待てお兄さん。いったいどこを見てナンパしてくれたの??
突っ込みたいのはヤマヤマでしたが無言で歩き続けると、お兄さんは去り際に
「てか、日焼け対策ヤバないすか?」
とひと言。
後でお腹をかかえて笑ったのは言うまでもありません。
*トリおんな*
学生の私にできることって?
以前、実習中に「患者さんにして差し上げられることが少なく、学生の無力さを感じる場面がある」と書きました。
あれからしばらく考えていたのですが、学生の私でも出来ること……それはひとまず
①患者さんの話を聴くこと
②勉強すること
ではないかという結論に至りました。
①について。
以前
「退院した後、〇〇しても大丈夫でしょうかね?」
と、大手術を終えた直後のおばあちゃんから尋ねられたことがありました。私の一存では答えられなかったので、主治医の先生に確認を取ってから答えたのですが、たぶん「忙しそうな先生には畏れ多くて尋ねられないが、若い学生さんになら気軽に尋ねられる」という意識が働いたのだと思います。学生なら学生なりに、患者さんの話をよく聴くことで、先生の目の届かない「小さな不安」を掬い上げる役割を果たせるのかもしれない、と感じた出来事でした。
(余談ながら、そのおばあちゃんには「かわいいお嬢さん」と呼ばれ、23歳トリおんな、嬉しいやら気恥ずかしいやら。笑)
②について。
当たり前ですが、たとえ担当患者さんに直接還元できなくても、担当患者さんにいわば「教材」となっていただきしっかり勉強することが大切だと感じています。将来同じような病状の方に出会った際に、きっとこの経験が生きるはず……。
というわけで、そろそろ5年生の実習も後半戦。がんばるぞ~。
*トリおんな*
オペ見学こぼれ話vol.11~麻酔科教授はスゴ腕~
オペ見学中のエピソード第11弾です。(3回連続の麻酔科エピソードでしたが、いよいよ今回でラスト)
前回記事はこちらです↓
当然のことながら、麻酔科の先生方はあらゆる外科系のオペに参加します。
何でも、うちの大学の麻酔科教授は、教授の身でありながら手技の巧みさが群を抜いていることで有名なのだとか。そのためか、教授自らがオペに入られることもしばしばです。
(※一般的に、教授が実際のオペに入って手を動かすことはあまりないため、手技については中堅どころの先生方が勝ることが多いのだとか……。うちの大学が特殊例なのかもしれません)
さて、ある日のこと。教授が麻酔科医として参加なさる、心臓外科のオペを見学する機会に恵まれました。
心臓のオペの際には、患者の状態をモニタリングするため「スワンガンツカテーテル」を予め心臓に(正確には肺動脈に)挿入しておく必要があります。(ドラマ「チーム・バチスタの栄光」で、城田優さん演じる麻酔科医が殺人に使っていたアレです)
教授の処置の間ずっとレントゲンの透視映像を見ていたのですが、教授がスワンガンツカテーテルを手に取るやいなや、まるで生き物のようにスルスルと心臓の中へ入っていくのです。
あまりの早さに、たいへん衝撃を受けました。
処置を終えた教授が近づいてきて、
「何か質問ある?」
とおっしゃったので思わず
「先生……スワンガンツ、すごかったです!」
と申し上げたところ、ニッと笑って親指を立てて去って行かれました。先生、お茶目です。
(去り際の教授。か、かっこいい……!)
*トリおんな*