医師の夜は長い
先日、ある科のカンファ(とにかく長い!)に出席したのですが、実習始まって以来初めて帰りが21時を過ぎました。
これまで回った科の実習では、大学を出るのは遅くてもせいぜい19時程度。
「今日は頑張った!私、先生たちよりも帰り遅いんじゃないかなぁ」
なんて思いながら病院の廊下を歩いていると、仕事を終えられた先生方がちらほら、私服で家路を急がれているところに行き会いました。
白衣に身を包んだ普段の姿とは違い、自販機で買った飲み物を片手にぶら下げていたり、少し疲れた表情を浮かべていたり、シャツが皺になっていたりと、「一日戦い抜いた感」が漂います。
そう遠くない将来、私もこうして夜まで病院に残って仕事をするのが日常になるのだと思うと、正直ずっと気楽な学生時代が続いてほしいような気もしてしまいます。
(と言いながらも、医師になるのは勿論楽しみなのですけれど)
*トリおんな*
モヤモヤした出来事
「患者さんの気持ちに寄り添える医師になりたいです」
どんな医師になりたいの?と訊かれた時、私がよく返す答えがこれ。志望の診療科がまだ決まっていないので、このような抽象的・優等生的な答えになってしまうという面もあるのですが、本心でもあります。実際、マッチング(就活)の面接の際にこういったことを言う医学生はかなり多いはず。
そのため今まで、「患者さんを助けたい」という思いは医師を志す者にとって大前提と信じて疑ってきませんでした。(だって、ただ単に高収入を望むだけなら、他に実入りのいい職はいくらでもありますもの。笑)
だからこそ、先日の実習中に目にした光景には、ちょっと衝撃を受けました。
いくら医療が進歩したとは言えど、世の中には未だはっきりと原因や治療法の分かっていない病気が数多くあります。ですから、先生が匙を投げたくなる気持ちも少しは分からなくもないのですが、、、
でも、だからと言って外来で
・患者さんにタメ口
・背もたれに寄りかかっただらしない座り方
・電子カルテの前には飲みかけのカフェオレ
・経過を書き留めたメモを見ながら一生懸命に症状を説明する患者さんの顔も見ず、「うん、うん」と生返事
・患者さんの退室後、「ああいう、メモを見ながら話す系の患者、面倒なんだよな」と笑う
…といった行動をとって良い理由にはならないのではないか、と思います。患者さんの気持ちを慮ると、何だか悲しくなってしまいました。
同じ白衣を着ていても、人間的に尊敬できる先生と、残念ながらそうでない先生とがいらっしゃいます。たまたま先生の余裕がない日だったのかもしれませんが、今回の一件で、医師は聖人ではないと実感。(もちろん、大多数の先生が師として尊敬できるということを、念のため書き添えておきます)
どうしてもモヤモヤ・ザラザラする気持ちは残りますが、この気持ちを糧にして、私は私の理想の医師像を目指していけると良いな。
*トリおんな*
余計なツッコミを入れますが、上記の一件の先生、綺麗な若い女性の患者さんにはなぜかとても優しかったです。現金だなぁ〜(笑)
男性はポニーテールフェチ?
どうでもいい話ですが、私の実習中のヘアスタイルは、ポニーテールが定番です。
ある日、同級生男子と病院のエレベーターで乗り合わせた時のこと。
男子A「俺さぁ、ポニーテールを見ると無性に引っ張ってみたくなるんだよね」
私「???」
男子A「やってみたことないけど」
私「……やってみたかったらどうぞ」(と言いつつ、ホントにされると困る。汗)
男子B「俺はポニーテール見ると、ほどきたくなる派かな」
私「……」(何なの、この男性陣のナゾ願望…)
ポニーテールは男性に人気の髪型、とはよく聞きますが、やはり何か特別な思い入れがあるのでしょうか。今後、ポニーテールで実習する際には男性陣の目が少し気になってしまいそうです(笑)
*トリおんな*
マッチング
先日、マッチング結果が発表されました。
(マッチング: 卒業後2年間の初期臨床研修を行う病院を決めるため、医学生・病院相方の希望順位をとりまとめ、希望が合致した順にマッチさせていく「お見合い」システム)
見事、人気病院への就職を決めた先輩が大勢いらっしゃる一方、残念ながらアンマッチ(つまりどの病院にも就職が決まらなかった)になってしまい二次募集の枠を探すことになった先輩も。
他学部の就活ほどではないにせよ、医師の就活もまあまあシビアです。
直接知っている先輩方の就職先が決まると、なんとなく私も「来年は自分」という気持ちが強くなります。
高2のとき、一学年上のセンター試験の時期にも、同じような気持ちになったのを思い出しました。時が過ぎるのは早いものです。
*トリおんな*
教授の弱点
大学病院の回診では、教授を先頭にした白衣集団がぞろぞろと歩いていきます。(そして私たち学生はこの集団に置いて行かれないよう、頑張ってトコトコ付いていくわけです)
この回診中には、初期研修医をはじめとする若手の先生方が、受け持ち患者さんの状態を教授にプレゼンする場合が多いです。
さて、とある診療科の回診中のことでした。
初期研修医の先生が、教授(この科の教授は教育熱心でいらっしゃることで有名でした)から質問責めに。
教授「それで、この患者さんの検査結果は、〇〇だったの?」
研修医「はい、一応〇〇でした(ちょっと自信なさげ)」
教授「『いちおう』ねぇ。最近の若い子たちは皆『いちおう』とか『〇〇みたいな』と言うんだけどね、それは止めた方が良いな」
研修医「すみません……」
教授「いちおうプロフェッショナルなんだから」
そこに他のベテラン先生から遠慮ないツッコミが。
「へえ、『'いちおう'プロフェッショナル』だって~。教授だって『いちおう』って言ってるじゃないの、ねぇ(笑)」
教授、一瞬沈黙。一同、爆笑。(教授も苦笑なさっていました)
これは 面白いものを見せていただきました。
*トリおんな*
オペ室こぼれ話vol.13~そっくりさん注意報~
これは先生方もまた然り。
そのため、オペ室では「そっくりさん」が大量発生してしまいます。目元だけならいくらでも似せられる……ざ○ちんさんと同じですね。
(あっ、前に回った科でお世話になった〇〇先生かな)
と思って会釈したら別人で、怪訝な顔をされるというような経験もしばしば。
そんなとき、意外にも良い目印になるのが「眼鏡」です。
赤だったり白だったり、あるいはフレームなしの眼鏡だったり……。眼鏡にこだわっていらっしゃる先生はオペ室でも気づきやすいので、ご挨拶しやすくて助かっています。
ただ、先生が眼鏡を買い換えられたときには困りそうです(笑)
*トリおんな*
オペ見学こぼれ話vol.12~心臓外科はストイック~
オペ見学中のエピソード、第12弾。
最近、一口に「外科系」と言っても、専門分野によって雰囲気にかなり差があるということが分かってきました。
例えば整形外科は
「学生さん、働き始めたらなかなか休みが取れないから、今のうちにたくさん遊んどくのがいいよ。あはははは」
と、かなり開けっぴろげな雰囲気(笑)
電鋸を使うようなダイナミックなオペ(誤解を恐れず言えば、まるで大工仕事!)が多いからでしょうか。ざっくばらんな先生が多い気がしました。
しかし対照的に、最近ローテしていた心臓外科は、とにかく真面目な雰囲気。他の外科ではオペの最中も雑談が聞こえていましたが、心臓外科のオペではなんと、雑談ほぼゼロ!
心臓は他の臓器と異なり、もしオペ後に異常が見つかれば、一刻を争って治療しなければ患者さんの生命が危うくなります。(他の臓器では一分一秒という単位では生命に関わらないことも多いです)
そのぶん、心臓外科の先生方はこれ以上ないほど慎重に患者さんを診ていらっしゃるのだと思います。
「臓器ネットワークからいつ『移植の心臓が手に入りました』と連絡があっても良いよう、常に緊急オペに備えてスタンバイをしている(キリッ)」
という話を伺ったときには、さすが外科の花形だなぁと頭が下がりました。
*トリおんな*
余談ですが、心臓外科のことを「心外(しんげ)」と略しますよね。
しかしこれ、パッと見「しんがい」だなぁということに気づいて、元々この記事に書いていた「心外」を全部「心臓外科」に書き直しました。どなたかお優しい方、この涙ぐましい努力の跡に気づいてくださいませ(笑)