【本】ファントム(スーザン・ケイ)
『ファントム(上・下)』(スーザン・ケイ)
長期休暇中にミュージカル『オペラ座の怪人』をNYで観劇して以来、どっぷりとはまってしまいました。
この本は、そのタイトルロールである「怪人」の生涯を描いた物語。(ちなみにミュージカルの製作者とこの本の作者は別人で、この本はいわば二次創作とのことです)そのため、ミュージカルに興味のない方には、この記事、よく意味が分からないと思います(汗)
内容は以下の通り。(Amazonより引用)
19世紀、フランス。夫を亡くしたマドレーヌが失意の中で産んだ長男エリックは、この世のものとは思えない恐ろしい容貌をしていた。以来マドレーヌは我が子をどうしても愛することができず、仮面をかぶせて屋根裏に閉じ込める。やがてエリックのずば抜けた頭脳は顕著になり、幼くして建築学を極めるとともに音楽の方面でも類いまれな才能を発揮。だが八歳になったとき、自分がいると母にも危険がつきまとうと知ったエリックは、自ら家を飛び出した…。あまりにも有名な〈怪人〉の生涯を、生い立ちから書き起こす感動作。
以下、感想。
・ミュージカル版ではとてもミステリアスかつダークな存在(だからこそ妖しい魅力があるわけですが)で、名前や年齢すらよく分からなかった怪人も、血肉をもつ存在(エリックという名前もあります)なのだということが浮き彫りにされていて、目新しかったです。
・ミュージカル版には、いくつかつじつまの合わない「突っ込みどころ」がありました。(そもそもオペラ座に怪人がどうやって隠れ家を確保したのか、など。)これに対してある程度説明が加えられていて、なるほどと思いました。
・ミュージカル版では怪人が歌姫クリスティーヌと出会った後の物語が描かれていますが、この本ではクリスティーヌの登場は下巻の後半になってから。若き日の怪人が世間に拒絶されて抱いたであろう寂しさには、胸が痛みました。しかし一方で、少数ではありますが、怪人のことを受け入れてくれた人たちとの出会いもいくつか描かれています。これには救われる思いでした
・翻訳がとても良いと思います!原本が違う言語だということをほぼ感じさせない、美しい文章でした。